独立記念日


  前回の蒸留機 起動で電源が壊れてしまった。
蒸留機も危なくて起動できないので作業は一時中断せざるをえなくなった。

  そして奴の失脚の大チャンスが一転、私の大失態になってしまった。
蒸留機が動かない、もしくは壊れたのは勝手に壊れたのだから知ったことではない、
でも電源が壊れたのはかなりやばい。

  私にしてみれば電源が壊れたのも勝手に壊れたといいたいところなのだが、
なにせ新築なのでそんないいわけは奴には通用しない。
  壊したのは全部お前の責任だ!勝手なことをしたからだ!
とでもいわれるだろう、まあ壊れたのは事実だから適当に聞き流して終わりだね。

  そして奴が戻ってくる。
  ばれるのは時間の問題なので、ここは自分から自首して自白するのがベスト。
  残念ながら強制収容所ではこんなことで罪が軽くなるなどということはないが
(むしろやっぱり言わなきゃよかったということの方が多い)
これがばれないということはないので、さっさと終わらせた方がいい。

  まともに事実を話すと私への責任がさらに重くなるので、
一部(かなり)編集して話した。

  そうすると奴は始めは予想通りキレはじめたが、途中でブレーカーが 飛んだんじゃないかと気づき、ブレーカーを探し始めた。

  ブレーカーは部屋の外にあり、それを見るとブレーカーが20個ぐらいあり、 その1つが飛んでいた。
  ブレーカーが20個あるということは、 それぞれの電源にブレーカーがついているということになる。
  ブレーカーは20Aにセットされているのでそれぞれの電源が20Aが限界になる。
とりあえず飛んでいたブレーカーを元に戻し、 テスターで電源がきているかをチェックするとちゃんと電圧が戻っていた。
このおかげで私の失態は帳消し、奴もたまにはいい仕事をする。

  でも、蒸留機の問題はまだ残っている、 これが動かなければ蒸留水が取れないので実験ができない。
  私達にとってはそれはそれでとてもうれしいことなのだが、 管理人である奴はそうはさせまいとする。

  もう一度接続してみるがやはりブレーカーが飛んでだめだったので、
まえに置いてあった私がいた強制収容所別館での電圧などをチェックすると、
この蒸留機は30Aで動いていることが判明した。

  この結果、スタビライザーは20Aまでしか対応していなく、 コンセントも同じなので、30Aの電流を強制的に流したので、 煙が出たという事故原因がわかった。

  このままでは実験をすることができないので、奴がもともと使っていた 強制収容所別館に戻してそこで使おうと言い出した。

  わざわざ持ってきたのにまたもって帰るのかよ、と思ったのだが、
ここで私のCPUがフル稼働、数秒ですばらしい演算をおえた。

  演算結果から、次のように言う。
「でも、機械をつけっぱなしにして、そのまま誰もいなくなったら危ないんじゃないんですか」
そうすると奴は、あきらかに私を見ながら
「やっぱりそうなると、誰かがいなくちゃいけないだろうな」
すでにアイコンタクトで彼が言いたいことはわかっていたのだが、 一応最後まで話を進めれるように、
「そうすると誰かが実験を途中でとめたりして、交代でいなければいけなくなりますね」
こういうと奴は、
「そういうわけにもいかないだろうから、 誰かがその部屋で実験をおこない、ずっといるようにしなければいけないな」
といった。

  まさに私の演算どうりに事は進んだ、
しかし最後の奴の一言だけが唯一最大のエラーだった。

「とりあえず、何とかなるまで君が戻ってむこうで実験をするしかないな」

それじゃあ意味ないんだよーーー!

と危うく絶叫しそうになるのをなんとかこらえた、
  私の演算では、最後は私が戻ってそこで実験をやれと 言われし(言わす)、あとはそのままずっと卒業まで居座りつづけるつもりだった。
  それが一時的に戻るだけでは、しかもこの一時的というのは相当短い期間になる、
蒸留機は他にもいくつかの研究室が同じ物を使っていて、これがなければ実験が できないので絶対に近いうちに何とかして使えるようにされてしまう、
そうすると一度持っていって、さらにもう一度運んだ荷物を戻さなければいけないので、 ただ労力を使うだけでなんらいい事がない。

  せっかくのチャンスだったのだが、こうなってはもう意地を張るだけ意味がない、 さっさとあきらめて、
「でも蒸留機はどこでも使うので、近いうちになんとかなるかもしれないから、もう少し待ちましょう」
といった。
しかし奴は一度思いこむと自分の考えを変えないので、
「それもいつになるかわからないから、とにかく実験をできるようにしなければいかん」
といった。

  この奴の言葉を強制収容所の標準言語に通訳すると、
「そんなの待ってたら何日実験が遅れるんだ!
俺様の論文を発表したりするデータが減るだろうが!
お前らはゴタゴタ言わんとさっさと実験ができるようにして、俺様のために ひたすら実験をやってデータを出せばいいんだ!」
ということになる。

  このように書くと大げさのように見えるが、そんなことは全くない。
たとえば私たちが4年次に奴隷のように働いてとったデータは、 実際に卒業研究の発表として使われた部分は25%にも満たない、
卒業研究程度の発表であれば実験を荒くやっていけば25%分でも十分足りる (それでも他の研究発表よりは多いくらい)、 なのになぜこんなに余分にデータを取らなければいけないのか、
これはすべて奴が論文として発表したりするためである。
実際に奴は私たちがとったデータで論文をしっかり発表している。

  そのくせ私達には、
「私の研究室では他のところの大学院並の研究をしている」
この研究室だけが大学院並の事をやっても結局卒業すれば他のバカな研究室を 出た奴らと同じで5流大学卒の烙印がつくだけ、全然意味ないんだよ!

「今は大変かもしれないがここでやったことは決して無駄にならない、 社会に出てから必ず役に立つ」
ほとんどすべてが全く役に立たない、なにせ大卒で研究職につく奴なんて ほとんどいない。

「君たちがせっかく取ったデータをそのまま埋もれさすのは もったいないから、私が国際学会などで発表してあげているんだ」
せっかくではなく、やらなければ卒業させないという脅迫をして無理やりとらせたデータだ!
(これについては私が4年次のときのほぼ全員が一度は「退学届を出せ」 「これがおわらなければ卒業はできない」とかいわれている)
そしてあげてる、ではなくかってに人のデータを使って発表しているだけ、 すべて自分のためにやってるんだろうが!
それだけでもむかつくのに、恩着せがましい言い方をするなーーー!

「他の先生は国際学会などで発表している人などほとんどいない、
毎年発表しているのはこの大学では私くらいだ」
この大学のレベルが低いのはわかるが、
他の先生はお前と違って学生を脅迫して無理やり実験をやらせて、そのデータを 奪って発表するなんていう、非人道的な行為をしないだけだ!
普通は自分で実験したものを発表するから、学生の相手と授業で忙しくて 実験がそんなにできないから発表できないだけだ!
他の先生がおかしいんじゃなくて、おまえの方がおかしいんだよ!


ほんとこいつは死なないとこの性格は直らないね、
でも死ぬだけでは直らないかもしれないからもっと有効的な手段を考えると、

奴の発表はすべて学生を脅迫して無理やりやらせたものである
そして奴は実験については自分が満足するデータを取らないとキレる
自分が思ったとおりのデータが出ないとおかしいからやり直せと言う
何度かやりなおしてもデータがおかしいまま出る、でも奴はそれを認めない

(ここまでくると普通は出たデータを信じるのだが、 奴は実験が自分の思ったとおりにうまくいけさえすればいいので、そんなことお構いなし)

そして実験をする学生には、まじめじゃなく卒業したいだけの人もかなり含まれている
こういう人達は卒業したら後の事なんか知ったことじゃないので、 奴が望むとおりにデータをかなりねつ造することになる。

奴は本当にバカなので、このねつ造されたデータを、
「やっぱり俺の思ったとおりに出ただろう、俺が正しかっただろ」
とかいって100%信じる、しかもこれが繰り返されていくうちに、
自分が思っていることが常に正しいんだと勘違いしていき、
いっそう自分の思った通りデータが出ないとキレやすくなり、
絶対に(自分が思ったとおりに)こうなるから、やり直せと何度も言うようになっていく、
これがひどくなっていくとまじめにやっている人でも、 まじめにやってデータを取ってるのにキレて怒られて、あまつさえねつ造している人 と比較して、

「あいつはうまくいっていて、君がうまく行かないのは実験に対する熱意が足りないからだ、 もっと実験に集中しろ」
とかいう、こんなことを言われたらまじめに実験をやっている人でもやる気なくなるに決まってる。
こうしてねつ造データが増えていく。

  奴は正真正銘の真のバカなのでこの悪循環について全くわかっていない、
研究者としての能力は知らないが、管理者としては能力は奴には全くないといっていいだろう、
こんな悪循環そこいらのバカでも気づくだろうからね。

  それでもまじめにやる人もいるが
(一応私もその1人、でも私の場合は4年のときは大学院に残るから適当にやっていたら あとで困るし、大学院では修士論文を書かなければいけないからまじめにやらざるを得ないので、 強制的にまじめにやらざるを得なかったから、そうじゃなかったら全部ねつ造してやってる)
どちらにしてもこの悪循環のおかげで、奴の知らないねつ造データが相当ある。

  奴はバカだからデータはすべて自分の思ったとおりに出ているから正しいと考えているので、 そのままねつ造データを信じて論文などを書いて発表している、
だから奴の論文などはかなり怪しいところがあるのだが、論文は毎年山ほどあるので いちいちその実験をやって確認なんかしてられないので、そのまま素通りして論文になっている。
  これは実験者の良識を信じるということと、わざわざデータをねつ造してまで 論文を発表する奴がいないと考えているからだろう。

  ということで、誰か奴の論文がおかしいという事を告発してやってくれ、
ねつ造が発覚すれば奴が必死に守ってきた地位と名誉が一瞬にして崩れる、
当然大学は解雇されるし、もうこの分野で研究をすることもできなくなる。

  死んでも直らなそうな性格もこれをやれば一発で直るだろう、

奴のために(私のためでもある)誰か告発してくれる、 善意の第3者募集中!

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  話がすごくそれた、いつのまにこんな話に・・・、
とにかくもとに戻そう。

  奴は私たちに早く実験を再開させたいので、私に一時的にでも戻れと言う。
これは私や他の4年生の研究発表が、急がないと間に合わないからで、君たちのことを 心配してのことだと奴は言う。

そんなわけねーだろ!
実験なんて終わらせようと思えば、荒くとれば1ヶ月もあれば卒業研究のデータなんて 簡単に集まる、
結局実験をただ多くやらせたいだけだろうが!
本当にむかつく野郎だ!

  長年の服役のせいでついすぐに怒りが・・・、 このまま怒りにまかせて書いていくと、話がそれること間違いなしなので、 おちついて続きを書くことにしよう。

  私としては先に書いたように、どうせ戻ってくるなら運ぶ労力を使うだけ 大変なので、このままここにいて電力の問題が解決するのを待ちたいので、 うやむやにしておきかったのでひきさがらなかったら、
なんとかその場をしのぐことができた。


同日(8月23日)午後7時
  この日もやっと強制労働が終了して、さあ帰ろうかというときに 奴が再び蒸留機の話をしだした。
  いいかげん忘れろ、と言ってやりたいのだがしょうがなくやつの話を聞く、
やっと帰れると思ったところに30分間の奴の説得はかなりきつかった。
  なんとか奴の説得をかわしていると、奴がどこかへ電話して戻ってきた、
電話はこの研究棟の管理者にかけたらしく、今回のことを話すと 今日はもう責任者がいないから明日みにくるということになったらしい。
  そしてやっと解放されて帰路につくことができた。


8月24日 昼
  この日もまた奴とまずい飯を一緒に食べていると、 再び昨日の話をしはじめた。

  ただでさえお前と食べていてまずい飯なのに、 いらん話をしてさらにまずくするな!
と思ったが、今日じゅうに業者が見に来るから、 ここは無視して聞き流すことにする。

執拗な説得が続いたがひたすら無視してなんとか15分ほどで終わった。

  昼食の後、また強制労働が再開された、
再開されてほどなくまた説得が始まった。

  ほんとうにしつこい奴だ!
直接嫌だと言わないと気づかんのか?
そんなに私たちがお前のための実験が遅れるのが気に入らないのか?
あと少し待てば責任者がきて簡単に直してくれるんだよ、少しぐらい待て!

奴の執拗な説得をかわすために奴が納得しそうなもっともらしいことを言ってみる。
「むこうに戻って実験をやって、すぐにまた戻ることになったらデータが おかしくなるかもしれないから、できるだけ移動しないようにしたほうがいいですよ」
実験至上主義の奴には実験を盾にするのが一番効果的だ。

しかし奴は
「もちろん移動を何回も繰り返すのはよくない、 でも向こうにいくのは戻るだけだから問題ないはずだ」
と一向に私の提案を受け入れる気はない答えをいったが、
このあと私が全く予想していなかった答えを奴がいった。

「でももう一度戻ってくるのはデータに影響を及ぼすかもしれないから、 むこうに戻るならそのまま居座るつもりでいけばいい」

  もともと元の所は出ていけとは一切言われていない、
でも奴が監視態勢が甘くなるから嫌がって無理やり移転させられただけなので、 居座ることは全然問題ない。
そしてそれは、私にとってもっともよい状態になる。

  最大の恩恵は監視態勢がかなり甘くなるということ。
  今までだとそれぞれの部屋が比較的近く、たいした用もないのに 来たり、授業にいく際によったりしていてた、
さらに会議室と事務室が収容所の上の階にあり必ず前を通るので、 事務室にいくついでによったり、 会議が始まると帰ることもできないというところだった。
(それでも4年のときにいた収容所に比べれば全然ましだけど)

  新しい収容所は200mくらい離れていて、さらに5階にあるので 奴がちょっとようもないのに来るには遠い、
さらに会議室と事務室も同じ5階にあるので会議などで来ることもない、
授業だけはまだ収容所に近いところにはあるが、少し離れているので わざわざ来なければいけない、
これらのことから、奴の襲撃はほとんどなくなるはず!

まさに少年院くらいの最高の環境!
少年院と同じようにこの環境で社会に適応できるように、 社会復帰のリハビリを残りの半年間続ければ、
社会復帰できる!
たぶん・・・、
できるかも、
もしかしたらできるといいな。(やっぱ無理かな)

  こんなわけで私は奴の話を聞くとすぐに移動の準備にかかった、
業者による移転作業が今日で終わりで、業者が運びやすい 状態にしているのがなくなってしまうので、早急に移動する。
  奴の話を聞いてから自分の荷物を再びダンボールにいれて、 4年生をこき使って元の収容所に戻るまで約2時間、
脱兎のような早さで戻った。

  そして・・・


  2000年8月24日に独立宣言をし、独立国家ナベ研を建国した。


  国家元首としては国民(今のところ私だけだが)の生活を守る義務が あるので、はやくM教授研との関係を完全に断ち切らなければいけないのだが、
残念ながら我が国では(実験用の)水を自給自足することができないので、 奴に頼らざるを得ない。
  私としては、国連にPKOを発動してもらって治安維持部隊を 送ってほしいところだ。
  同時にWTOにも提訴してパネルを設置してもらい、 水の供給と引き換えに不当な労働を課している状況を改善させたい。


  まあこんなわけで今は労働は全く楽にはなっていないが、 収容所の環境がよいので、少しずつ精神の病も癒されていっています。
  このまま精神崩壊の状態から、せめて人間として生きれるくらいまで 回復できればと思う今日この頃です。

  ちなみに移転してから今までの3ヶ月間で、奴がナベ研に来たのは 5回くらいです。

独立国家ナベ研は最高です!

  残念ながら私の元首としての任期は 2001年3月末までなので、今後はどうなるか不明ですが、
私が元首のうちにM教授研からの難民と 亡命希望者をできるだけ受け入れていきたいと思っています。



独立国家ナベ研の一般公開