第一次研究室大戦
第一章

  千九百九十九年、六の月に大戦は始まった。

1999年 6月14日 午後2時  「開戦」
  1999年6月14日 午後2時 かねてより関係の悪化が懸念されていた 教授と私の状態が最悪になる。
  きっかけはいつもどうりに、またつまらないことで教授が切れたこと からだった。
  事故と言うものは、トラブルがいくつも重なった事により起こるものである。 この日もまさにそうだった。

  朝、4年生のいる研究室のほうに行った。このとき研究室にある 冷蔵庫の扉が半開きになっていたので閉めた。
  しばらくして昼頃にまたいったが冷蔵庫の温度は下がっていなかった。

  第1のトラブル、いままでこんなことは一回もなかった。
なぜこんなことが起きたかというと、研究室の冷蔵庫には基本的に 要冷蔵の試薬が入っている。ここにさらに例のおじいちゃんの牛乳や ミネラルウォーターがすこしだけ入いっている。
  この日は月曜日で、最近は冷蔵庫の試薬はほとんど使っていなくて、 4年生は土曜日も全く触っていないと言っていた。
さらにおじいちゃんがこんな証言をした。

「あーた、土曜日に飲んだときはちゃんと冷えてましたよ」

じゃあ犯人はお前しかいないだろーーー!

  でも一応、目上の人なのでさすがに言えない(本当はすごく言いたかったけど)
  まあ、私は直接は全く関係なくとがめられる事もないので耐える事ができた。
でも4年生のHO君(大事件を起こした彼)はそうはいかなかった。

  なぜなら教授がきてどうしてだと聞かれたときに、おじいちゃんのせいとはちょっと いいにくく、おじいちゃんは自分ではないと言い張っているために、教授は4年生を 怒る。
(誰がどう考えたっておじいちゃんが容疑者最有力候補なのだが、教授はおじいちゃんに 頭が全く上がらないので、4年生のせいにした。)

  これだけなら、まあ4年生だしここでトラブルを起こしてもしょうがないので、我慢もで きるだろうが、もう1つ許せない事がHO君にはあった。

  それは、その冷蔵庫に入っているミネラルウォーターや牛乳は、彼がおじいちゃんに頼まれて (命令されて)買いに行っている(行かされている)ことだった。
  しかもそれは大学には売っていないので、わざわざ一度大学にきてから近くの コンビニまで行き買くるのだが、ミネラルウォーターはそれで簡単に調達できるが 牛乳は簡単にはいかない。

  おじいちゃんは低脂肪乳を指定してくる、そもそもコンビニで牛乳を買うのでさえ 売りきれとかがあり、一苦労なのに低脂肪乳と言われては・・・。
  この事件が起こる数日前にも、買ってくるように頼まれたのだが、牛乳がなくて 45分ぐらいかけてコンビニを5,6軒回ってやっと買ってきたばかりだった。

  そんな彼に耐えろというのは無理というものだろう。
当然のごとく、彼は切れかかって(切れて)いた。
  私は一応、仮にも、名だけだとは言え、まがりなりにも、大学院生らしき 者に分類されている、かもしれない、と思われる存在なので (私は自分を大学院生だとはさっぱりおもっていないが)HO君をなだめる役をすることになった。

HO君「あいつ(おじいちゃん)がやったんですよ!」

私「まあ、そうかもしれないけど、一概には言いきれないかもしれないし」
(当り障りのないコメント)

HO君「絶対あいつです!」

私「私もそうかなと思うけど、おじいちゃんはそう思ってないみたいだし」
(現実をつきつける)

HO君「僕、ちょっと言ってやります」

私「それはちょっと、やめたほうがいいよ」
『ぜひ言ってくれ、私は止めはしない、 自分が悪い事をわからせてあげなさい、 私もあいつに言いたいことはいっぱいあるがここは君に任せよう、さあ言え、今言え、すぐに言え』

私「やっぱり、今後のことを考えるとねー」
『後の事は私にまかせなさい、君の尊い犠牲は無駄にはしない、ように、努力する、方向で 検討してみるように、善処する、と思う、ような気がするから』

HO君「それでも許せないですよ!」

私「そこは何とか我慢しようよ、ボケてるのかもしれないしさー」
『うん、うん、許せないよね、だからさー、つべこべ言わんと早く言ってしまいなさい』

HO君「誰が牛乳買ってきてやってると思ってんだよ!」

私「確かにそうなんだけどさ、世の中こういうこともあるもんなんじゃないかなー」
『ホントだよ、牛乳くらい自分で買ってこいっつーの! ついでにこの事も言ってくれ、 そして自分がひ弱で本来なら世間の誰からも相手にされない、むしろうとまれる (私たちからうとまれている)存在であることを気づかせてやれ!』

HO君「ふざけんなよ、じじい! 次、頼まれたら絶対断ってやる!」

私「まあ、まあ、とりあえず落ち着いて」
『そのまま切れて、じじいを殺してやれ、そうなったらもう一人殺しても同じだろうから、 ついでに教授も殺っちゃてくれ』

  普段温厚な彼がこんなに切れやすくなり、切れるような事件が起きる、 それがこの収容所になれていくということなんだろう。


  通常ならこれで事件は終わり、私としては化学実験日記に一部始終を書き記して 終わるのだが、今回は違った。
  おじいちゃんの飲み物はどうでもいいが、要冷蔵の試薬を常温においておくのは まずい(といっても土曜日からだから、もういまさらという気もしないでもないが)
ということで、直す事になり、必然的に教授が直すことになる。

  このときに第2のトラブル発生、冷蔵庫の冷却官に氷が付着しているのでとりのぞく ことになり、教授がドライバーが必要といいだした。
とりあえず、所在がわかっているプラスドライバーをわたす。
だが、教授はマイナスドライバーが必要だと言い出した、氷を取るんならなんでも いいんじゃないのか?と思いながらもマイナスドライバーをどうするか考える。

  前(化学実験日記 99「やっと勘違いに気づく」)にも書いたがマイナスドライバーは 一度探してなかった、このため必要と言われてもどうしようもない。
  しかも氷を取るくらいなら別に必要ないだろうと思ってあまり気にしていなかった。

  ここにさらに、たたみかけるように第3のトラブルが発生した。
研究室の地面が局所的にぬれていて水溜りができていた。
そこは以前にHO君がクロコンを こぼしたときにも、そこに水溜りができていた、今回はクロコンをこぼしたわけではないか なぜそこだけがぬれているのかわからなかった。

  そして教授がそれに気づいてしまった。

教授「これはどうなってるんだ? どこからか水が漏れてるのか?」

私「さあ? どうしたんでしょう、私はチョットわからないんですが」
『そんなん知るかボケ、俺に聞くんじゃねー、4年生に聞けよ』

  4年生に聞いてみるがよくわからないという、しょうがないので原因を確かめ るために置いてある機械をどかしたりして見ていた。
  でもよくわからない、どうしてこうなったのかを考えていたら、それ(奴)は起(怒)った。

教授「おい! マイナスドライバーはどうなってるんだ!」

誰もなにも答えない、このままなにも答えないわけにもいかない。 一応院生の立場として、なにかしら言わなければいけない状況になる。
でも言う言葉が見つからない。

教授「何で探してないんだ!」
(この時点でもう完全に切れた口調になっている)

私「・・・・・。」
『なんでって、お前が水が漏れてるかもしれないから原因を特定しろと言ったから、 そっちを見てるんだろうが!』

教授「お前は何を考えてるんだ! 俺がいっている事はどうでもいい事だと思っているのか!」
(完全に私だけを見て、怒っている)

私「・・・・・。」
『何で俺が怒られなければいけないんだよ! 冷蔵庫の件も関係なければ 水溜りの件も全く関係ないだろうが! ドライバーだって俺がなくしたわけでもなく、 俺が使うわけでもないのに、俺にも怒りやがって、ふざけるなよ!』

教授「どうなんだ! おい! わかってるのか!」

ブチッ

私「マイナスドライバーは前に探してなかったんだよ!」
(もちろん完全にマジ切れ口調)

教授「だから探さないのか!」

私「だから水漏れの原因の方を先に調べてたんだよ!」

教授「マイナスドライバーがないと直せないんだ! 常温においておいたら試薬が どんどん壊れていくだろ! そんなこともわからんのか!」

私「じゃあ、買ってきます!」
(すごく反抗的な態度で言う)

教授「買わなくていい! そういう事じゃないだろが!」

私はガンつけまくり、奴も無言でにらんでいる。
数十秒間のにらみ合い、膠着状態が続く。






私「じゃあ、もう一回探してきます!」
(まったく探す気などなく、しょうがないから、という言い方で言う)