第一次研究室大戦
第ニ章

1999年 6月14日 午後3時  「捜索」
  マイナスドライバーを探す気はほとんどなかったが、私としては気分最高の 状態だったので、まあここは大人の私が、聞き分けのないガキのたわごとを 聞いてあげるのが良いだろうと思い、折れてやることにした。

  ちなみに私の気分がなぜ最高かというと、いままではどんなに気に入らなくても 我慢せざるを得なかったが、今は違う。


さかのぼること数ヶ月前
  1999年3月某日  「平和条約締結」

  大学院進学のことで教授のところに話をしに行く。
そのうち書くと思うけど去年の暮れに大学院の進学をやめる話をしていた。
でも教授に止められ、親や大院生のSさんの説得もあって、とりあえず 保留する事にしていた。
  そして現在私が大学院生をやっている事からもわかるように、一応進学する ことにした。
  でもこれはしょうがなく、妥協するしかなかったからだった。
というのも今からでは 就職はどうせたいしたところにはできない、だから大学を卒業しても とくにする事がない、それならどうせ入学金と授業料を払っているのだから、 進学してみる?と言う感じだった。

  まあ、もしかして、万が一にも、ひょっとしたら卒業できる可能性も 入学するからには、すごーく低いにしてもある。(0.000001%くらい)
  さらに、いつやめてもどうでもいいので、どうせやめるなら、教授にいいたいことを 言いまくってやめてやるのも、恨みをほんの少しでも晴らすことにはなるかなー、 さらに私がいることで奴を苦しめる事ができればよりよい、ということで進学した。

  でもただ進学しただけでは大変で意味がない。そこでこの話をしに行ったときに条件を出した。

私「修士の研究は、今までやっていたクロマトの実験は絶対にやりません。 クロマトをやるんだったら、たぶん速攻やめますから、そのつもりでお願いします。」
  このクロマトという実験の説明は難しいのでパスするが、とにかくすごーく大変で、 小型のポンプと吸光計という機械を使う。この機械がまた良く壊れる、壊れると 教授が切れる、でも勝手に壊れるのでどうしようもない、そしてストレスがたまる。
しかも時間的制限があり、実験者に相当な負担を強いるという過酷な実験である

さらに私は条件をつける。

私「あと、化学以外にも勉強したい事いっぱいあるんで、実験を 1日中やって家に帰ってデータの整理をして寝るだけ、というようなことは絶対しませんので。 あんまり大変だったらすぐやめますから」

  ちょっといいすぎのようにも見えるかもしれないが、奴はこれぐらい言わないと わからない。
  これまでは、たとえば去年の11月に私は車の車検があって、名古屋に戻らなくては いけなかった。(通常ならどこでもいいのだけれども、そうは行かない理由があった)
このため土曜日の夜に帰って月曜日に車検にだして、夜帰ってくるので月曜日 休みたいのですが、いいですか?
というように聞くと、だめだとは言わないが、くどくどと嫌味のようなことを いい、すごく休みにくくなるというような状態だった。

  すなわち奴には気を使ってお伺いをたてるなどということは、全く意味を なさないのだ。
  奴にはこっちの要求をずばりといって、お前の意見を聞く気はない という姿勢を見せないと、こっちがどうしても必要な事でいっていることを 理解しない。お伺いでは、奴はどっちでもいいことのように解釈しやがる。
よってこのようなキツイいい方になる。
  まあすべて奴自身のせいだからしょうがないだろう、同情の余地一切なし!

教授「クロマトをやりたくないというのはわかったが、実験が大変なのはある程度 しょうがないと思うぞ、大学院生なのだから、学部のときよりやらなくてはいけないだろう」

この通り、あれだけ強気の姿勢を見せても、こう言う事が言える奴だから。
  私は学部のときもすでにそこいらの研究室の大学院生よりはるかに実験をやっていた。 それを越えろだと?

私「どれだけやるかは、自分で決めます。私が必要と思う以上にやら なければいけないなら、それは私にとってマイナスになるからやめます」

教授「それはどういうことだ?」

私「私は化学だけで食べていけるとは思ってません。英会話とか パソコンとか総合的に勉強しておきたいので、化学にばかり時間をかけていられないんです。 だからそれを妨げるようなら、大学院の方をやめるということです。」

教授「そうか・・・。」

  このときもいいたいことを言えたのでかなり気分が良かった。そして教授に この条件を飲ませる事に成功して、平和条約の締結にいたる。


そして、現在

  そんなわけで私にしてみれば、大学院にはやめるために入ったようなもので、 いつやめるか?というものでしかない、まあやめるんなら早い方がいいなー と思うくらい。

  このような状態だから、私は別にこのような状態になったことを驚きもしなかった。 まあ、起こるべくして起こったのだろうという程度のことだった。

  はっきりいって気分があまりにも最高で、緩む顔を必死にこらえるので精一杯だった ので、早く奴の前から立ち去らないと、この状況で大笑いしかねないということも あって、ドライバーを探しにいくという名目で部屋を出る。

  いちおう、まじめな私としてはもう一度探してみる。今度はかなり本格的に 探してみる、1時間ぐらいゆっくり時間をかけて探したら、2本ほど見つかった。
(でもこんな所になんであるの?という所ばかり)
一応、教授に報告に行くことにする。


同日午後4時   「交渉決裂、平和条約破棄」
  ホントは1日かけて、いくら探してもなかったと言ってドライバーを捨ててしまえば もっと良かったのだが、さすがにそれは人としての道をはずす事になるので、持っていった。

私「さがしたら2本ほど見つかりました」

教授「そうか・・・、だが、もうHO君がマイナスドライバーを 他の研究室から直したのでいらんぞ」
(かなり重い雰囲気)

  そのまま無言、静寂のひととき。後、激怒。

教授「やっぱりあっただろうが! ちゃんと探さないからいけないんだ!」

見つかったのは事実だし、とりあえずいつものような理不尽な切れではないので とくに気にもならず、たしかにもっと良く探せば良かったなーと思うぐらいだった。

教授「だからお前はいけないんだ! よく探しもしないでないだのといって!」

  この辺はすでに私の自己反省も終わって、話が長くなりそうなので、 また切れてるよ頭悪いんじゃないの?とか思って、聞き流していた。
  私の気分はまだかなり上々だったのでまったく気にならなかった、むしろよくこれだけのことで 怒れるよな、とちょっと感心しているぐらいだった。 (すでに勝っていると自分が思っていられる余裕がなせる技)

話は続く、なんか怒ってるけどどうでもいいやとほとんど聞いていなかった。
奴がとぼけた事をほざくまでは・・・。

教授「それにしても、さっきのお前の態度、4年生の前であれはないだろう!」

『あ?なんだと! お前おとなしくしてたら調子に乗ってんじゃねーぞ!』

教授「お前がああ言う態度をとると4年生にもしめしがつかんだろうが!」

『馬鹿かお前、いつやめてもいい俺だからとれるんだろうが! 他の奴だって 卒業かかってなかったら、みんな同じ態度とってんだよ! 殺すぞてめー!』

教授「大体お前は謝ることをしらん! 謝るつもりはないのか!」

『謝れだあ? まえに見つけれなかったことは悪いと思うが、そもそもこれは俺が使って、 なくしたわけでもなく、冷蔵庫の件も少なくとも俺は全く関係ないのに、わざわざ時間をさいて やってんだぞ! 怒ることしかしらんお前になどに、謝ることを しらんなどといわれる筋合いはないぞ、ボケ! お前こそ、自分がいけなくても人のせいにして、 謝ったことないだろうが!』

私「前に探したときに見つけられなかったのは、私の探し方が甘かったた めなので、それについては、すいませんでした。」
本当はそのときに私が探す必要は全くなかったのだが、一応その点については 悪いとも思っているので謝っておいた。全体的には全く悪いとは思ってないが 大人な私は、感情をおし殺して自分が悪いと思われる点を謝った。
でもただ謝るだけというのはさすがにできなかった。

私「たしかに見つけられなかったですけど、見つけた場所が」

教授「そんな事は関係ない! お前がちゃんと探さなかったからだろうが!  そもそも人に言われて謝るというのはどういうことだ!」

私「ですけれども」
ガンをつけながら、こっちも切れた口調で話した。

教授「そもそもお前は、人の話を聞こうともしない、だから」

バタン・・・、ドン!
勝手に途中退室する。ついでに怒りを何とか押さえるために閉めたドアを おもいっきり蹴る。

『いつまでも、てめーの馬鹿話に付き合ってられるか! 
人の話を聞かないのはおまえだろうが! 
お前が自分のいいたいことだけを言うつもりなら 話す事なんかないんだよ! 
一人で勝手に壁とでもはなしてろ! 
悪いとはほとんど思ってないけど一応謝ってやったら、こんどはそれについて 切れるだと、ふざけるな! 
俺があの態度をとるのは お前のせいだろーが! 
てめーが普段からくだらんことで切れるから、俺もストレスが たまって切れるんだよ!
お前、絶対殺してやるからな!』

奴と私はこのようにして、交戦状態におちいり、平和条約は完全に破棄された。