犯罪事件簿

  「今日、犯罪を犯してしまった。 (゚-゚;」

まあいまさら、こんなことを気にするのもどうかと思うんだけど、いつもよりかなり すごい事をしてしまったからちょっと罪悪感が・・・。

  ことは今日の朝に、新しく入ってきた4年生の1人がおこした。
(まえにかいた女性ではない)
  悪い事は重なる事によって起こるもので、この日はもう1人の女性が就職活動で いなくて研究室は彼1人だった。
(うちの研究室は2つあり、1つを私を含めた院生2人で使い、もう1つを4年生の 2人が使っている。)
  その液体はものすごーく危険なものだから、取り扱いには細心の注意を払って おこなうようにと、何度もいってあった。

  この危険というのは、化学をよく知らない人にもわかりやすく説明すると、 一般によく知られている危険な物質の濃硫酸や濃塩酸なども、この液体に比べたら たいした事はないというくらいの物で、直接手で触らないのは当たり前としても、 もし1滴でも皮膚についたりしたら、すぐに5分くらいよく洗わないとあとで すごいことになる。

  朝11時くらいに、もう1人の院生のSさんが、4年生の使っている研究室に行く。
なんかすぐに私にも来るように電話がかかってくる。
  研究室に行くとなぜか床が水浸しだった。なぜ?と思ったが、まあ水道を流しっ ぱなしで流しから逆流したんだろうと思っていた。
  ただなぜか4年生男の子がいないので状況をきこうにも聞けない。
とりあえず、しょうがないので私とSさんで水を吸い取る事にする。
作業を始めると、なぜかその水が黄色かった。さらになんか変な匂いまでする。
なにこれ?やばくない?と思い、作業を一時中断する。

  少し考えてみる。こんな色がつくのはもしかして、あの溶液がこぼれているのでは?
だとするとあまりうかつに手を出さないほうがいいよな、とりあえず手だけ洗っておく。
ただその溶液というのは、はっきり言ってそんなにこぼせる物でもない、というか こぼしようがないはずだった。
現に今までこぼしたと言う話を聞いた事もなかった。
だからもしこぼれていてもたかが知れていると思い、あまり気にしていなかった。
  とにかく、このままくと有害なガスとかを発生しかねないのでチリトリやモップを駆使して できるだけ、取り除く事にする。
  15分くらい作業を続ける。その間も彼は一向に帰ってこない、私達の研究室と この研究室は近くにあり、しかも私はSさんの電話を受けてきたので呼びにきたにしても 入れ違いになる事はない。
  そしてやっとかなりの水が取れていたきたくらいに、彼が戻ってきた。すぐに聞く。

  「どこいってたの?」
彼「いや、ちょっと」
  『この状態でちょっとってどこにいってたんだ!詳しく話せよ!いやとにかく今はこの状況を 聞かなければ』
  「これはどういう事なの?」
彼「これは、クロコン(重クロム酸という、先に書いた超危険な溶液)をこぼしまして」
  『でおまえはその状態をほったらかしてなにしてたんだよ!』
なんとなく水を取っているときも黄色が濃いなーと思っていたが、コンクリートの床で 汚くて黒色が混ざっていたのでよくわからなかった。でもそれにしてもおかしいんだけど と思い聞く。
  「どのくらい?」
  彼がこぼれた状況を説明する。聞いてみた私の率直な感想。

『おまえアホかー! そんな状態を何ですぐに報告しにこないんだー!  しかもお前がかってに判断して対処できる事じゃないわー! ほんと殺すぞお前!』

  ちょっと感情的になってしまったね。でもほんとに信じられないことをしでかしていた。
彼の説明は簡単にいうとこうだった。

  朝、その危険な溶液をちょっと使ったときに、ちょっとした事故があって クロコンをほんの1〜1.5リットルくらい床にこぼしてしまいました。
このままではまずいだろうということで、水をまいておきました。

『はぁ?1リットルだあ? 水をまいてそのままだと! しかもそのことを誰にも言わず どこかにいくだと! しかもそれを知らずに俺達が処理してんだぞボケ! お前とりあえず 死ね、ここで切腹しろ、介錯は俺がしてやる。 さあ死ね! いま死ね! すぐ死ね!』

  このとき私がこれを彼に直接言わず、心の中で押さえておけたのは去年1年間の 研究成果のおかげだろう。それにしてもミスというのは誰にでもある、(それにしても このミスはかなりけた違いだが)だが彼はあれほど危険だといった溶液をこぼしたという 事の重大性を全く理解していない。しかも それをほおっておいてふらふらしているなんて話にならない。

  とにかく3人でクロコンに汚染された水の処理をする。
このクロコンと言う溶液が危険というのにはもう1つ理由がある。
それはこの溶液が超一級の有害物質に指定されているということだ。
まあ超一級といってもダイオキシンとかに比べれば安全なほうなんだけど、 それでもかなり危ない物で、それ故においそれと水道に流して捨てる事はできない。
  さらに危険な物なのでただ適当な容器にいれておくというわけにもいかず
(容器が溶けたりする)
いやだったがしかたなく、教授のところに報告に行く。
あたりまえだけど
  ぶち切れる
私達は全く関係ないんだけど、一緒に怒られる。
(まあ私達は当事者ではないのでたいしたことはなかったけど)
とにかくクロコンを保存しておくには特殊な容器が必要だと言う事で、 それを探せと言われる。
でもそんな物はなかった。
そこで教授にまた相談する。

教授曰く
「このままにしておいても、いまいれている容器が溶けるのは時間の問題だから 保存しておけない、となると・・・、流すしかないな、犯罪だけど。
とにかくよく薄めて流せ、そのときに水は最大出力で流しつづけろ」

  『そんな馬鹿なー、薄めても絶対量は全く変わらないよー、しかも実行するの 俺達だろ? (T_T) 』

  ちなみにクロコンは詳しくは調べていないが、環境基準ではたぶん多くても 1000ppm(1リットル中に1000mg=1g)が限界だろう。(おそらく100ppmぐらい、 もしかしたら10ppmくらいかも)
  うーん、あれはかなり濃い溶液だから、たぶんすくなくても2,300gは たっぷりあっただろうね。
  とすると環境基準を通るには2,300リットルは流さなくてはいけないね。
(でも本当はたぶん2,3000リットルは流さなくてはいけないんだろうな)
しかもこれはただの環境基準で、そもそもこんなに大量に流す事は想定されていない。 これが食物連鎖で濃縮されて戻ってきたら・・・。

  でもこれはすべてクロコンをあんなにこぼした彼がいけないんだよ、恨むなら彼、 もしくはそれを流させた教授を恨んでくれ。

  ほんとに今日は最悪の日だった、このクロコンの処理工作が終わったのは午後3時、 実験の準備もなにもしていないのに午後3時。しかもどっと疲れが出て実験をやる気に もならない。

  私はまあ気分的な物と1日を浪費したということですんだが、Sさんはさらにまだ下ろ したばかりのジーパンをはいていた。
クロコンというのは皮膚につくとすごいことにな るとかいたが、これは衣類にもいえる。1滴つけばそこに穴があく。あれを処理すると きに間違いなく何滴もついているだろうな。かわいそうにあの新品が穴だらけに・・・。
幸い私はもうぼろぼろのジーパンをはいていたので穴があいてもOK(ていうかすでに いくつも穴があいてるから、数が増えるだけ)

  とにかく大変な一日だった。せっかくなので速報でお伝えしてみました。